新学術「分子夾雑化学」レクチャーツアー ( A01 計画班 : 浜地先生 )
レクチャーツアー報告書
京都大学大学院工学研究科 教授 浜地 格
総括班・計画研究 A01 班の浜地格は、2018 年 8月 29 – 9 月 1 日まで、ドイツ:ハイデルベルグの EMBL ( European Molecular Biology Laboratory ) で開催された第 6 回 EMBL : Chemical Biology コンファレンスにおいて、多成分夾雑系である生細胞や組織での内在性タンパク質ケミカルラベリング、その展開としてプロテオミクスの新概念である conditional proteomics や活性化されていないタンパク質表面のリジンを標的とする covalent inhibitor の設計に関する基調講演(浜地)を行った。
また、この機会を活用して、分子夾雑の生命化学という本学術領域が日本の科研費プログラムの中で昨年度からスタートしていることの紹介を行った。
EMBL : Chemical Biology コンファレンスは、2年に一度 EMBL で開催される化学生物学(ケミカルバイオロジー)に関する国際シンポジウムであり、Carsten Schultz, Kai Johnssonを中心とした組織委員が、4日間に渡る学会を主催した。
この国際会議では、S. Schreiber, D. Liu, S. Kelleyといった文字通り世界トップの研究者の熱のこもった発表があり、本領域とも非常に関係の深い細胞や in vivo での小分子から生体高分子までの分子の挙動やそれに関わるシグナル伝達、細胞や個体の応答など幅広い観点で、基礎研究から医療応用までを含む濃密な議論が交わされた。
今回は、主催者によると、ドイツやイギリス、フランス、スイスをはじめとしてヨーロッパ各国、アメリカ、カナダ、さらには中国、韓国、日本、台湾などアジアからも若手 faculty からポスドク、学生を含めて300名以上の参加者があり、ポスター発表も150件以上(3日間掲示)におよび、様々なレベルで非常に活発な議論が連日繰り広げられ、ネットワークが形成されているようであった。2年後にも開催する予定である事が主催者から最終日に発表された。浜地は、ドイツやスイス、オランダのケミカルバイオロジー研究の中心的な人物と、分子夾雑の生命化学分野の国際交流に関して意見交換の機会をもった。