新学術「分子夾雑化学」海外派遣 ( A01計画班 : 王子田先生 )
IST Austriaへの海外派遣の報告書
九州大学大学院薬学府創薬科学専攻 修士2年 倉重伸崇
九州大学大学院薬学府の倉重は、2017年12月3日から18日にかけて、オーストリアにあるIST Austria重本研究室において、夾雑系でのタンパク質ケミカルラベル化研究のための技術習得ならびに研究実施を行った。
当研究室で進めている夾雑系でのタンパク質の特異的ラベル化法を電子顕微鏡イメージングに応用するために、IST Austriaの重本教授と、博士研究員の田畑先生に指導していただき、生細胞ラベル化によるタンパク質の金ナノ粒子修飾、膜レプリカ試料作製、そして電子顕微鏡での観察を行った。当研究室では、下記の左図のhigh pressure freezingや、右図の凍結割断の機器はなく、倉重は今回初めてこれらの機器を使用し、レプリカ作製等々の新たな実験操作を習得した。また、電子顕微鏡によるタンパク質イメージングについても技術指導を受ける事ができた。
今回の共同研究の内容は、重本研究室においても、これまで行ったことがない金ナノ粒子を直接結合させたラベル化プローブを用いた実験であった。そのため研究の過程でさまざまなトラブルが生じたが、多くの検討を行い、ディスカッションを重ねた。その結果、約二週間という短い期間ながら、夾雑系におけるタンパク質の一分子観察技術の発展につながる予想以上に良好な結果が得られた。今回の成果をきっかけとして、今後も引き続いて重本研ならびに当研究室双方での共同研究を継続し、夾雑系でのタンパク質の特異的ラベル化技術を確立したいと考えている。倉重は、来年度から博士過程に進学の予定であり、四月からは、今回の技術を活用したコバレントドラッグ創薬について研究を進め、夾雑系における有機化学の開拓と創薬応用展開を進めていきたいと考えている。