新学術領域研究「分子夾雑の生命化学」関西シンポジウムが開催されました
分子夾雑の生命化学関西シンポジウム(2021年12月21日)報告書
甲南大学フロンティアサイエンス学部 教授 三好大輔
2021年12月21日に甲南大学平生記念セミナーハウスにて、新学術領域研究「分子夾雑の生命化学」関西シンポジウムが開催されました。新型コロナウイルスへの対応から、対面とオンライン(Zoom)を併用したハイブリッド形式での開催となりました。
本シンポジウムは、領域趣旨と領域内での研究成果を共有するとともに、領域研究の最終年度として「分子夾雑の生命化学」の今後の発展などについても議論することを目的としました。年末ではありましたが、対面形式で21名、オンライン形式で12名 計33名の参加がありました。
冒頭の領域代表の浜地格先生からのごあいさつに続き、立命館大学北原先生からのタンパク質の高圧環境下における相分離挙動とその反応機構といった基礎的な研究成果から、金沢大学新井先生からの無輻射失活が優先する光熱変換色素を利用した細胞機能の制御や、九州大学王子田先生からのタンパク質に対する共有結合医薬品の設計開発などの展開研究まで、多岐にわたる研究成果が報告されました。
さらに、東京大学大学院工学系研究科山東信介先生と東京大学大学院薬学系研究科 浦野 泰照先生に特別講演をお願いしました。山東先生からは、「化学が実現する生体中分子のデザイン:ペプチド・タンパク質創薬への展開」と題して、細胞膜透過を可能にする生体中分子の分子設計についてご講演いただき、分子設計におけるデータ駆動型サイエンスの可能性と問題点について議論がなされました。浦野先生からは、「ライブイメージング化学に基づく新たながん個別化医療の実現」と題して、蛍光プローブの論理的精密設計からプローブ技術の臨床医学応用までをご講演いただき、診断や創薬における化学の重要性が議論されました。
最後に甲南大学杉本先生から閉会のご挨拶があり、シンポジウムを無事に終了することができました。その後も、会場でのフリーディスカッションが続くなど、シンポジウムを通じて大変活発な議論がなされました。分子夾雑の概念からの新しい生命現象の発見やその分子機構の解明が進むと同時に、分子夾雑の展開や応用などが結実しつあることが改めて認識され、分子夾雑化学という学理の構築が着実に進捗していることが実感できたシンポジウムとなりました。
シンポジウム集合写真