新学術「分子夾雑化学」海外派遣 ( A01計画班 : 浜地先生 )
UC Berkeleyへの海外派遣の報告書
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻 博士2年 西川雄貴
京都大学大学院工学研究科の西川は、2017年10月23日から2018年1月27日にかけて、米国にあるUC BerkeleyのChris Chang研究室において、生理活性物質応答性タンパク質ラベル化試薬の開発ならびにそれらを用いたタンパク質修飾評価を行った。
Chang研究室では銅(I)イオン、鉄(II)イオンや有機小分子などの生理活性物質を検出するための小分子蛍光センサーが多数開発されており、疾患モデルにおけるこれら生理活性物質の蛍光イメージングが精力的に行われている。蛍光センサーによってこれらの生理活性物質の挙動解析は可能になってきているものの、どのようなタンパク質がそのシグナル伝達に関与しているかを調べる方法はこれまで開発されていなかった。
そこで西川は、当研究室で進めている環境応答性(conditional)タンパク質ラベル化試薬とChang研究室で開発されている蛍光センサーを参考に、特定生理活性物質存在下で反応性が向上して周辺のタンパク質をラベル化する化合物の設計・合成を行った。化合物の設計、試験管内でのラベル化評価に際しては、Chang研究室の学生と議論を重ねた。その結果、ある生理活性物質選択的に応答しタンパク質をラベル化する化合物の開発に成功した。更にこの化合物を用いて生細胞でのラベル化実験を行い、生細胞内においてもタンパク質をラベル化できることを示した。
三ヶ月という短い期間であったが、今後のホルムアルデヒド研究の一助を担う可能性を秘めた新規化合物の開発を達成できた。今後はChang研究室の学生がこのテーマを引き継ぎ、疾患モデルにおけるラベル化評価及びラベル化タンパク質のプロテオーム解析が検討される予定である。西川自身も今後も彼らと連絡を取り合い、論文化に向けて引き続き議論を重ねていく予定である。