新学術「分子夾雑化学」レクチャーツアー ( A01 計画班 : 浜地先生 )
レクチャーツアー報告書
京都大学大学院工学研究科 教授 浜地 格
総括班・計画研究A01班の浜地格は、2019年10月28-11月1日まで、中国:蘇州にあるCold Spring Harborのアジア支局(CSHA)で開催された第1回CSHA: Chemical Biology and Drug Discoveryというコンファレンスに参加した。
このコンファレンスにおいて、多成分分子夾雑系である生細胞や脳組織に存在する内在性タンパク質の有機化学的修飾戦略や抗がん剤の標的タンパク質であるHsp90表面の活性化されていないリジンを標的とするcovalent inhibitorの設計に関する招待講演(浜地)を行い、「分子夾雑の生命化学」という本学術領域のコンセプトを紹介した。
Cold Spring Harborは、ご存知の通りDNA二重螺旋で歴史的な研究者であるJames Watsonを所長とする生命科学の世界的研究拠点であり、もちろんアメリカ東海岸に拠点を構えてシンポジウムや共同研究も支援している。そのアジア支局(CSHA)が、中国にあることをご存知の方はまだ多くないかもしれないが、蘇州郊外の半月湖の畔に事務局とコンファレンスセンターがあり、ここで定期的な(色々な生命科学のトピックスに関する)コンファレンスが開催されている。今回CSHAで初めてChemical biologyを主題とするコンファレンスが、吉田稔先生(理研/東大)、Yan Mei教授(精華大学)、Haian Fu教授(Emory)、R. Mueller教授(Helmholtz Institute)のお世話のもと、開催された。
Kevan Shokat教授(UCSF)のKinase阻害剤と免疫療法との組み合わせに関する最先端に関する基調講演の後、広い意味での化学生物学(ケミカルバイオロジー)研究者が、熱のこもった講演と議論を展開した。アジアからは主に中国、日本、韓国からの招待講演者、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリスなどの招待講演者からも最先端の成果が披露され、会場との熱心な質疑意見交換が繰り広げられた。一般参加者の多くは、中国国内からの大学院生、ポスドク、若手研究者であり、国内学会としてこのようなトップレベルの会議に参加できる機会が得られる中国の若手をちょっと羨ましく感じた。浜地は、招待講演者だけでなく、中国から参加している若手研究者が大学院生とも、分子夾雑の生命化学の国際交流や共同研究に関して意見交換した。