狙ったタンパク質機能の選択的不可逆阻害を可能にする新たな分子デザイン (A01計画班:王子田先生)
九州大学大学院薬学研究院・創薬ケミカルバイオロジー分野の王子田彰夫教授、進藤直哉助教、徳永啓佑大学院生を中心とする研究グループは、標的タンパク質機能の選択的な不可逆阻害を可能とする新たな分子デザインとして、ひずんだ特異な構造の求電子基・ビシクロブタンカルボン酸アミド (BCBアミド) を見出しました。
本研究では、大きなひずみエネルギーを有する特異な構造の「ビシクロブタン環」に新たに着目し、その反応性を精査しました。その結果、BCBアミドが化学選択的にシステイン残基と反応することを見出し、ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) を標的とする新規コバレントドラッグへの応用に成功しました。
得られたBCBアミド型コバレントドラッグは、従来広く用いられるアクリルアミド型コバレントドラッグと比べ、高いBTK選択性を示しました。さらに、定量的プロテオミクス解析により、可逆的相互作用によって標的タンパク質を認識するリガンド部位が同じでも、タンパク質と化学反応を起こす部位 (反応基/warhead) が異なると、オフターゲット反応性のプロファイルが大きく変化することを明らかにしました。本成果は、好ましいタンパク質反応性プロファイルを有する新規コバレントドラッグの分子デザインに大きく貢献することが期待されます。
以上の研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際科学誌「Journal of the American Chemical Society」に2020年10月13日付けオンライン版で掲載されました。